求心位を保持するってどういうこと?
まずは、これをご覧ください。
注)救心は(株)救心製薬の生薬製剤です。肩関節の痛みには適しません。
「キュウシン」なんて言葉、救心のCMでしか聞いたことがないけど・・・
求心位という言葉があるようです。求心とは、「中心に近づこうとすること」の意味で、反対語は遠心になります。「バケツを振り回しても中の水がこぼれないのは遠心力が働いているからだ」という時の、遠心が馴染み深い割には、求心に聞き覚えがないのではないでしょうか。ちなみに、遠心の意味は「中心から遠ざかろうとすること」です。
求心に聞き覚えがないのに、「求心位」となると益々ハードルが高いですが、要は関節の安定性を表す時に使われる言葉です。骨の頭(先)の部分が、関節の正しい位置に収まる状態を求心位といいます。理学療法でよく使われる言葉になります。
さて、求心位が保たれている関節はスムーズに動かすことができます。言わばあるべき位置に収まっている状態です。一方、求心位が保たれていない関節は、車軸のブレる車輪のように不自然な動きになります。酷い場合は、車輪がフレームに接触して、その部分が壊れることもありそうです。
図の様に、求心位が保たれていれば骨頭はほとんど定位置ですが、求心位が保たれていないと骨頭の動きが大きくなり、ほかの組織を傷つける可能性が高くなります。
求心位を肩関節で考えてみよう
肩の関節は、自由度の高い関節です。腕を上げる時、「前へならえ」をするように、真っ直ぐ前に挙げることもできれば、真横に挙げることもできます。後ろにだって回すことができます。このように自由度が高いということは、裏を返せば、不安定な状態にあるという事です。
「前へならえ」をしてみて下さい。肩甲骨を寄せて胸を張った状態から、肩甲骨を離して胸を狭めた状態へ変化させると、腕は前に伸ばされます。この時、骨頭は関節の中心から随分と前に押し出されています。本来は少し肩甲骨を寄せて軽く胸を張った状態が、肩関節に最も自然な位置に骨頭を持ってくることのできる姿勢です。
三角筋後部を鍛えるサイドライイングリアレイズでの求心位は
肩の筋肉、それも後部を鍛える種目としてサイドライイングリアレイズというものがあります。筋トレをしたことがある方なら、サイドレイズは聞いたことがあるでしょう。ライイングというのは、寝て行うという意味で、そのリアレイズですから、後ろの筋肉を使って持ち上げるサイドレイズになります。
ダンベルを持つ手を上にして、ベンチに横向けに寝ます。ダンベルを持った方の手を前にならえをするように体の横に出します。ダンベルを地面と水平かそれより下した位置がスタートポジションになります。この時、ダンベルをさらに体から離そうと腕を前に出そうと思えば、かなり遠くに伸ばすことができると思います。こうすると肩の筋肉にストレッチがかかって、良いように思いますが、実は求心位という点からは、保たれていない不安定な状態になります。
図でも分かるように、求心位が保たれている場合は、骨頭の位置が動かず、円の中心がブレることなく腕が持ち上げられていきます。反対に右側のように求心位が保たれていない場合の動きは、まるで骨頭が関節の中に飛び込んでいくような動きになってしまっています。
ストレッチを効かせて運動をするという考えは悪くないのですが、スタートポジションで腕を体から遠ざけようとするのではなく、腕を肩方向に少し縮めるつもりで、骨頭の収まりの良い位置に固定してから動き始めることが大切です。ストレッチを効かせるなら、ダンベルを持つ腕を前に伸ばすのではなく、下に下すことで行うようにします。
ベンチプレスでも同様です。ベンチプレスでは、常に胸を張り続けていれば、腕は自然と肩関節方向に押し付けられるようになって、求心位は保たれます。しかし、最後の一押しとばかり胸を狭めて必要以上にバーベルを持ち上げようとすると、胸から負荷が抜けるばかりか、求心位も保てなってしまいます。そうすると肩関節に強い負荷がかかり、肩関節の負傷につながることがあります。
このように筋トレをする際は、関節の故障を招かないためにも、骨頭が関節にうまく収まる位置(求心位)意識しながら関節を動かしてみましょう。